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誰が悪いのかハッキリさせろ〜荒井昌一元FMW社長、自殺の記事に接して

by りっぱなしまうま

 

 最初はアングルか! と思った。いや、思いたかったのだ。
 これぞエンタテインメント プロレスの真骨頂! ってな、感じで、棺桶に担がれて登場し、地獄から蘇った借金王、とかなんとか。IWAジャパンなんかだったらぴったりのキャラクターじゃないか… しかし、そのニュースを配信したのは、キチンとした新聞社のサイトだったのである。

 『倒産! FMW』(徳間書店)はすでに読んでいた。あれは暴露本などでは決してなく、FMWが倒産した運命の一日のセミドキュメント。そして悪い時には悪いことが重なるという倒産に至るまでの流れだ。3分のイチはプロレスに情熱を燃やしたイチ青年の青春の記録。3分のイチは大仁田の横槍で歯車が狂い出したFMWの転落の軌跡。そして最後の3分のイチは恐るべき街金融資の実態。ここまで赤裸々に書かれたものは、筆者もさすがに読んだ記憶がない。血涙で綴られたかのような行間からはとんでもない迫真力と緊張感が伝わってくる。
 この著書全体を通して繰り返し述べられているのは、自分自身の力不足と強い責任感からくる懺悔の念だ。しかし、果たして荒井氏一人が、ここまで背負う必要が本当にあったのだろうか?

 例えば、全日本子女子プロレスの倒産にしろ、普通の人間が背負ったら気が狂うか自殺しているはず(週刊ファイト元編集長・井上義啓氏)と言われたA.猪木の莫大な借金なんかにしろ、実はワシ自身、プロレス的な見方をして、本気で心配していなかったところはある。
 今年、2月のFMW倒産のニュースを聞いても、“あ〜 とうとう潰れたか…” で、終わってしまってその先に続く感想は出てこなかった。というのは、“でも、ま、大丈夫なんじゃないの”という楽観がどこかにあったからだ。
 実際、全日本女子プロレスはキチンと復活して今も健在だし、だいたい日本マットにはW★INGの茨城清志・元社長(チケット代、7000円返せ!)のような最悪の前例がある(笑) 破産宣告とかなんとか、適当に切り抜けられるんじゃないのか? と安易に思っていた。 
 しかし、全日本女子プロレスには 豊田真奈美、堀田裕美子をはじめとする義理堅いベテラン レスラーがたくさんいて、松永兄弟のデタラメ経営を信じがたいことにノー ギャラでサポートしたのだ。
 A.猪木には借金を肩代わりしてくれるスポンサーの佐川急便会長や優秀なスタッフである坂口征二社長や敏腕マネージャーの新間寿がいた。また特にレスラー A.猪木にはそれを認めさせるだけの恐るべき求心力があった。
 リングで戦っていた時が一番安全だったなんて言われた阿修羅原にしても、最近ではそれがトレード マークみたいになってしまった安田忠夫にしても、馬場・猪木という両御大がバックにいたわけだし。全日本プロレスが三沢以下所属レスラーの大量離脱によって、解散の危機にあった時、一番のサポートはファンの声援だった。実際、筆者も後楽園ホールに行ってしまったし…
 結局、ファンさえも含めた全員が団結し、良い時も悪い時も、いい意味で開き直ってやれたからこそノー プロブレムだったわけだ。いわゆるプロレス的ないい加減さって、こんな時こそ最大の武器となる。プロレス村の危機管理能力というのは抜群だし、だいたい何をおいてもプロレス村は、人に恵まれている。
 だから、世間一般では“倒産した中小企業の社長が自殺”なんて、ありきたりの事件なのかもしれないが、少なくともこれまでプロレス村では、たった一人の人間をここまで追いこんでしまうことなどなかったはずなのだ。

 ところが、今回のFMWの倒産〜荒井氏、自殺までの流れにおいては、誰も彼をバック アップしていない。誰も相談に乗らなかったし、助けもしなかった。団結力、ゼロである。会社が倒産した途端、冬木も大仁田も面倒な後始末は全部、荒井氏に押し付けてさっさとトンズラし、どこ吹く風と冬木はすぐに別団体WEW(ワールド エンタテインメント レスリング)を旗揚げし、大仁田も荒井氏を助けるわけではなく、自分のプロジェクトで動いた。
 しかし、このFMWでは冬木も大仁田も役員や株主の立場にあったわけで、何故、こんなに簡単に責任を放棄できるのだろう? と不思議なくらいだった。また実際、そういう要職になくても、荒井氏を中心にして、何らかの策を講じるべきではなかったか?
 荒井氏が街金から逃げ回って、都内某所に潜伏中と『FRIDAY』で報じられた時ですら、誰も彼に助けの手をさしのべなかった。冬木も大仁田も興行を打てるだけの資金がありながら、何故、荒井氏を見殺しにしたのか?
 今回は、荒井氏一人が問題を全部、抱え込んでしまった上に、彼がプロレス村の住人とは思えない責任感あふれる普通の感覚の持ち主だったということが響いた。悪い意味でマジメだったのだ。だってW★ING元社長・茨城清志なんて 荒井氏並みの神経だったら最低5回は自殺してるやろ(苦笑) 
 FMWの草創期、リングアナをしていた荒井氏とは、会場で何度も会った。それだけに、この週末はメチャクチャ、落ち込んだ。“おつかれさま” と声をかけると、いつもにっこり笑って、挨拶を返してくれていた。本当に誠実な人柄がにじみ出ていた。結局、それがアダになってしまったのだ… 自殺した場所が、子供時代に遊んだ公園だったというのが、なんともやりきれない気分にさせられる。しっかり受身をとって、プロレス村でしぶとく活躍して欲しかった。
 ’93年4月2日、全日本女子プロレスが横浜アリーナで主催したオールスター ドリーム スラムの大成功を受けて同月11日、大阪超時代宣言と銘打たれた第二弾が府立体育館で開催された。この時もFMWからは工藤めぐみ、コンバット豊田らが参戦したのだが、各団体のリングアナが一試合毎に持ち回りででコールを受け持った。荒井氏の超オーヴァー アクションと独特の甲高い声があの時ほど、誇らしく思えた時はなかった。“俺たちゃあ、FMWのファンなんだーっ” “いいぞぉー、アライ〜!!” 今思えば、あれこそ荒井氏、一世一代の晴れ姿ではなかったろうか…

 あの本に書かれたことが事実なら、大仁田厚の責任は重大だろう。結局、大仁田にしてみれば、自分が引退してFMWが潰れれば、それは“やっぱり、大仁田は凄かった” という評価に直結し、彼の薄っぺらなプライドも満たせたのだろうけれど、どっこい、そうではなかったところから、歯車が大きく狂い始めたわけだ。
 ところで、今、大仁田のHPを見たが、またまたトンデモないコメントが掲載されていて異常に腹が立ってきたぞ。
 曰く“何年も離れてたけど何があってもずっと友達だと思ってた。FMWを一緒に立ち上げたじゃないか。せめて電話1本ほしかった。最後まで夢を捨ててほしくなかった。昌ちゃん、安らかに眠ってくれ。俺はおまえの分までがんばるから。心からご冥福をお祈り申し上げます――大仁田厚――”
 なんだよこれ。大仁田はこの期におよんでまだ良い人を演じているが、彼の実際の言動は、ここに書かれた言葉を全部、裏切っている。離れていたのは、大仁田が荒井氏を見捨てたからだし、荒井氏もそれが分っていたから電話しなかったんじゃないか。大仁田は荒井氏の本を読んでいないのだろうか? 
 それに、おい、冬木! なにが今更、追悼セレモニーだよ。本当に助けて欲しい時は何もしなかったくせに、人の死を商売のネタにしてんじゃねえよ!
 誰が悪いのかハッキリさせろ!

 

 

 

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