| 『ゴジラ対ヘドラ』 | ★★★ | 2002年度ベスト?位 | |||
| GODZILLA vs. HEDORAH | 東宝 | 71 | 85mini | ||
| 監督/坂野義光 | 02.3.16 | VTR |

この作品が制作された’71年当時、正体不明の公害に対する恐怖というものが如何に凄まじかったかということが、このハチャメチャな作風からリアルに伝わってくる。
’70年7月18日、東京都杉並区、立正高校の校庭で女生徒がバタバタ倒れたというニュースこそ、光化学スモッグの出現を最初に伝えたものであった。筆者はこのニュースのことは実によく覚えている。また、水俣病やイタイイタイ病といった当時まだ原因が不明で、奇病と言われた病気に対する恐怖も、小学校の社会の時間に教わって相当、強烈に記憶している。また水俣病のために、異常に飛び跳ねながら狂い死んでいく猫の映像に震えていたのが我々の世代だ。あの映像は本当にトラウマ的に怖かった。
こうした正体不明の恐怖こそ実は’54年初代ゴジラの持っていた核や理不尽な破壊に対する恐怖と同じ種類のものであり、ゴジラも第11作を迎えて、もはや完全に子供映画というくくりの中で(この作品は東宝チャンピオン祭の新作)公開されていたにもかかわらず、ここに来て精神性の上で見事に原点回帰を果たしている。
この作風は例えば川内康範の『レインボーマン』の第22話や『ノストラダムスの大予言』といった作品の世紀末的、半ばヤケクソ的なノリとともに東宝という映画会社のアナーキーな体質を見事に表現している。
ヘドラの持つ正体不明の不気味さは、その正体が生物ではなく宇宙から飛来した隕石に含まれる地球外鉱物であり、その鉱物の持つ性質がヘドロを触媒として活性化され、あたかも生物のような形態や動きをするという設定の見事さにある。
つまりヘドラとはまさに公害そのもののメタファーであり、集まって巨大化し、汚水を排泄しながら海を泳ぎ、硫酸を降らせながら空を飛び、オワイを撒き散らしながら陸を這い回るその4段変化はそのまま、光化学スモッグ、酸性雨、六価クロム、二酸化炭素の増加による温室効果、地球の温暖化、極点の氷の解凍といった様々な状況に重なる。しかも、生き物ではないから、公害という人間のエゴがなくならない限り根絶できず、何度でも再生するということである。
そういえばPプロの『スペクトルマン』はこの視点をさらに進め、ヒーローは公害Gメンのメンバーであり、出現する怪獣は全て公害を具象化したものだった。
多くの人々がこうした公害問題に自覚的になり、様々な取り組みが行われた結果、幸いヘドラが出現することはなく、ゴジラの助けも必要ないところまで、状況は好転している。
’71年当時のサイケデリックな風俗を反映して、麻里圭子のボディ スーツにはサイケデリックなペイントが施され、いたずらに危機感をあおるアナーキーなヴォーカルが合計三回も披露される。この歌詞の内容だけでも、おそるべき素晴らしさなのだが、しかし、演出面でのこのベタなノリはいったい… この作品はそういう意味で実にモニュメンタルな金字塔であり、’70年代初頭の時代背景が生んだ鬼っ子と言えるのだ。
演出は非常に残酷面が強調され、ヘドラの吐き出すヘドロを浴びたゴジラは顔面が焼け爛れ、片腕は骨がはみ出してしまう。逆襲に転じたゴジラは、ヘドラの胴体部分を両手でブチ抜き、目玉様の二つの球体をを取り出す。これまた、従来のお子様ランチでは決してありえない演出といえよう。
ヘドラの活動を活性化するヘドロを乾燥させることで、ヘドラを倒すことを考えた科学者の提案で、ヘドラは元の泥の塊に戻るが、いつ復活するかわからないぞ! という警告を込めてドラマは終わる。
’70年代初頭は怪奇の時代であったが、この作品も見事にそのファクターを取りこんで、ゴジラ シリーズとしては異色の一本に仕上がっている。
製作:田中友幸 音楽:真鍋理一郎 特殊技術:中野昭慶
脚本:坂野義光、馬淵 薫
出演者:山内 明、柴本俊夫、川瀬裕之、吉田義夫、麻里圭子、木村俊恵
|
1 水銀 コバルト カドミウム 鉛 硫酸 オキシダン シアン マンガン バナジウム クロム カリウム ストロンチュウム 汚れちまった海 汚れちまった空 生きもの皆 いなくなって 野も 山も 黙っちまった 地球の上に 誰も 誰もいなけりゃ 泣くこともできない かえせ かえせ かえせ かえせ みどりを 青空を かえせ かえせ かえせ かえせ 青い海を かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ 命を 太陽を かえせ かえせ |
2 水銀 コバルト カドミウム 鉛 硫酸 オキシダン シアン マンガン バナジウム クロム カリウム ストロンチュウム 赤くそまった海 暗くかげった空 生きもの皆 いなくなって 牧場も 街も 黙っちまった 宇宙の中に 誰も 誰もいなけりゃ 泣くこともできない かえせ かえせ かえせ かえせ みどりを 青空を かえせ かえせ かえせ かえせ 青い海を かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ かえせ 命を 太陽を かえせ かえせ |